2020年春季低温工学・超電導学会 セッション報告

7月28-30日(火-木)

HTSマグネット 1A-a01-05 座長 

講演無し

HTS線材特性(1) 1A-p01-07 座長 東川 甲平

本セッションでは、高温超伝導材料・薄膜・線材・導体ついて4件の報告があった。
1A-p01:下山(青学大)らは、銅酸化物超伝導材料におけるキャリアドープ状態制御について、Gd123溶融凝固バルクの酸素アニール過程を系統的に調べた結果を報告した。
この結果に基づいたバルクの最適な作製法や、知見の薄膜への適用可能性について、活発な議論が行われた。
1A-p03:木内(九工大)らは、人工ピンを添加したYBCO超電導薄膜の臨界電流密度の膜厚依存性について、磁化計測によるJc(B)特性の評価結果と、磁束クリープモデルに
よる解析結果を報告した。膜厚に対するクリープの影響を詳細に議論する一方、昨今の高Jc材では大きく影響を受けることはないという情報も頂いた。
1A-p04:土屋(名大)らは、市販REBCO線材における磁化緩和法による永久電流減衰率及び低電界発熱評価について報告した。特に、磁化緩和率への人工ピンの導入の影響
を詳細に議論しており、その結果の解釈について活発な質疑応答が行われた。
1A-p07:伴野(物材機構)らは、レーザー加工REBCO細線のマトリクス複合化による多芯線実現可能性について報告した。REBCO線材の多芯化は応用上の悲願であり、重要な
取り組みである。機械特性やヒートサイクルなど、実用化を期待する質問が活発であった。


MgB2(2) 1A-p08-10 座長 小田部 荘司

このセッションでは331の閲覧があった。

1A-p08: 須藤(青学大)はPremix-PICT(Powder-In-Closed-Tube)によりMgB2を作製した。その際にロール圧延成型を用いて、テープの厚さdを0.80から1.03 mmに変化させた。
その結果、d =0.90 mmの試料で最も高いJc=8.7×105 A cm-2(20 K, 0 T)を得た。また異なる材料粉からMgB2を作製した際に熱処理条件を変えることで、ほぼ同じJc特性を
得ることに成功した。Web上での質問は3件で7項目あり、圧延の効果、Jcの測定方法、今後の見通し、MgB4の利用理由、電顕写真について、圧延とTc劣化について、圧延の
向きとJcの異方性についてであった。
1A-p10: 髙橋(上智大)は先進超電導電力貯蔵システム(ASPCS)で利用することを目標としてMgB2線材を開発してきている。前回までの研究で凹みによるJc劣化があったので、
改良Nbバリアにより特性劣化が抑えられるか検証した。その結果、Jc劣化は認められなくなった。線材はCHOI Jun Hyuk(Sam Dong)氏によって行なわれている。質問は3件
6項目あり、製作方法、凹みの与え方、次のSMESの製作時期、MgB2への要求性能、蓄積エネルギー、Nbバリアの重なり部分についてであった。


送電ケーブル(1) 1B-a01-04 座長 大屋 正義

1B-a01:松下(九工大)らは、超電導ケーブルの臨界電流測定方法の国際規格化を目指して、電圧タップの取り付け位置と抵抗成分の除去方法について実験と理論解析の
両面から検討した結果について報告した。分布定数回路方程式の解法について活発な議論が行われた。新型コロナの影響で国際ラウンドロビン試験が実施できず、各国の
合意を得られないまま原案を提出しないといけない苦しい状況についても紹介があった。
1B-a02:山口(中部大)らは、航空機向け超電導直流ケーブルの短絡電流試験結果について報告した。航空機応用では軽量性が求められ、電圧も400 V程度と低いため、積層
導体を志向している。短絡電流試験後にIc/n値の若干の低下が確認されたが、端末部構造に起因するものと推定しており、端末部の改良を進めて
いる。今後は、BSCCOとREBCOの比較評価も行う予定。
1B-a03:神田(中部大)らは、航空機向け超電導直流ケーブルとして積層導体の検討結果、および200 A級-HTS線材6層-2 m長ケーブルの検証結果について報告した。以前の
研究で線材間に磁性体を挿入すると臨界電流が増大すると報告しているが、航空機応用では軽量性が重要なため不向きである等の議論が行われた。


磁気分離(2) 1B-p01-04 座長 酒井 保蔵

「1B-p01:西嶋ら(福井工大)」電場と磁場が直交する水路で、マイクロプラスチックを海水との電気伝導度差による電磁アルキメデス効果(ローレンツ力の反力)で分離する研究。
質疑応答では、将来の実用化についての質問などがあり、魚の養殖場での応用を目標としているなどの回答があった。
「1B p02:三島ら(福井工大)」上向流で浮遊状態の常磁性粒子を水平方向の磁場を印加し磁化率の差で磁気分離するための基礎的研究。超電導応用のときの磁場の使い方に
ついて質疑応答があった。
「1B p03:奥村ら(大阪大他)」火力発電所のボイラー水中から酸化鉄スケールを除去する超電導磁気分離技術の実用化研究。常磁性と強磁性の混合スケールの凝集性とpHの関係、
磁気分離への影響を検討した。実機のpH、pH調整剤、HGMSフィルターの耐蝕性などが質問され、稼働中はボイラー水pHは塩基性に調整されていること、酸性で化学洗浄する
こと、フィルター耐蝕性は問題ないことなどの回答があった。
「1B-p04:赤澤ら(神戸大)」バラスト水による生態系への影響を抑制するため、ローレンツ力を利用した魚卵の電磁力型分離装置について研究した。魚卵の特性と分離性能との
関係、分離速度などについて質問があり、卵の外膜で電気抵抗が増し、海水との電気伝導度差が生じローレンツ力が発現すると考えていること、原理的な研究で、装置の大型化
などは今後の課題であることなどが回答された。


磁気分離(3) 1B-p05-9 座長 三島 史人

本セッションでは、活性汚泥法およびメタン発酵法のような微生物を利用した水処理技術に磁気力を利用した磁化活性汚泥法とそれに関連する要素技術について5件の発表が
あった。微生物フロックいわゆる活性汚泥にマグネタイトなどの磁性粉を吸着させ磁化し、磁気力により汚泥を引き上げ、高効率に固液分離する磁気分離を利用した生物処理法
についての報告がされた。社会実装に向けたパイロットプラントでの試験結果を中心として、同時にパイロットプラントのさらなる高効率化を探索し、付随する要素技術やその後
に見える実プラントにあわせた詳細検討について、ベンチスケールにて精査している様々な試験結果が報告された。
今回初めてのweb発表会であったにも関わらず、活発な質疑応答が行われた。その大半を占めた質疑応答は実用化についての課題とその進捗状況であった。その回答から実用化
段階はかなり近いことが感じられた。本セッションを通じて、磁気分離法の今後の展開やこれらの装置の超電導化による実装化などについても非常に期待されるセッションとなった。




デバイス(1) 1C-a01-06 座長 日高 睦夫

1C-a01:山梨(横国大)パイ遷移ジョセフソン接合を用いた単一磁束量子汎用論理ゲートの設計について報告した。パイ接合はトンネルバリアに磁性体を用いることで位相差を
πずらしたジョセフソン接合である。従来から言われているゼロ静的動作を行うことができる他に回路面積縮小と動作マージン拡大が可能であることが示された。
1Ca-02:山栄(横国大)断熱量子磁束パラメトロン回路(AQFP)を用いたアップダウンカウンターの設計と動作実証を行い100 kHzでの動作が確認された。
1Ca-03:山田(横国大)機械学習によるAQFP回路配置順序最適化モデルの検討を行った。ReLU関数とMish関数という二つの損失関数を用いて検討を行った結果、Mish関数の方が
適しているという結論を得た。
1C-a04:廿日出(近畿大)ガイド波の歪みをSQUIDで検出することによるパイプライン探傷試験の解析にニューラルネットワークの手法を導入した。まだ初歩的な段階であるが、
形状の異なる欠陥の検出が確認されており今後の進展が楽しみである。
1C-a05:寺井(埼玉大)カイネティックインダクタンス検出器の一種であるLEKIDを用いた光子検出デバイスの開発状況が報告された。温度変化によるピーク変動から単一光子
検出が可能であるこが示唆された。
1C-a06:久保(KEK)BCS超伝導体表面抵抗のミクロ理論を用いて超伝導共振器の高性能化が議論された。この理論は加速器用の空洞共振器だけでなく量子コンピュータなどに
用いられる薄膜共振器にも適用可能である。


デバイス(2) 1C-p01-06 座長 水柿 義直

「デバイス (2)」では超電導ディジタル回路に関する6件の発表があった。
「1C-p01:浅井(横国大)」では、Adiabatic Quantum Flux Parametron(以下AQFP)回路における信号伝搬特性、特に反射特性について数値計算結果が示された。
「1C-p02:田中(横国大)」では、Glitter配線アルゴリズムによりAQFP回路面積が削減できることがモデル計算で示された。
「1C-p03:齋藤(横国大)」では、フィードバックを含むAQFP順序回路の論理合成ツールが提案され、実行例が示された。
「1C-p04:池戸(横国大)」では,Rapid Single Flux Quantum(RSFQ)回路の受動伝送線路の幅を変えた場合の周辺回路パラメータの最適化結果が示された。
「1C-p05:高橋(横国大)」では,AQFP回路において双方向データ伝搬を可能とする回路方式とそれを利用したスイッチ回路の動作シミュレーション結果が示された。
「1C-p06:高川(横国大)」では,AQFP2個とローパスフィルタを組み合わせた位相判別回路が提案され,グレイゾーンが従来回路よりも向上することがシミュレーションにより示された。


デバイス(3) 1C-p07-12 座長 明連 広昭





HTS線材 製造/評価 1P-p01-04 座長 

講演無し

HTS線材 交流損失 1P-p05-07 座長 小川 純

磁化損失のピックアップコイルを用いた測定方法の報告が鹿児島大学と京都大学から1件ずつあった。どちらも測定サンプルがないときに発生する見かけの損失についての
報告であり、1P-p05:富﨑(鹿児島大学)は複数個のレーストラックコイルを組み合わせたコイルの対称の位置に配置されたピックアップコイルとキャンセルコイルを置くこと
により低減されたことを示した。1P-p06:羅(京都大学)からはピックアップコイルの電圧について、外部磁界を0.5 mTで固定し横軸を周波数として10 kHzまで周波数を変化
させたときのバックグラウンドの電圧についての報告があった。配線を変えるなどすることにより測定電圧に変化はあったが現状では非常に大きな電圧が残っており、さらなる
改良が必要なことが示された。


MgB2(1) 1P-p08 座長 元木 貴則

MgB2(1)セッションでは、1件の発表が行われた。
1P-p08:藤井ら(NIMS)は、自作および市販のMgB2粉を用いて、ex-situ法によりMgB2線材を作製しその超伝導特性について報告した。酢酸を主とする有機酸溶液で処理することで
超伝導特性を低下させる原因であるMgOを原料粉末からほとんど完全に除去できることを示すとともに、酸処理粉末を使用することでMgOを含む原料粉末を使用した場合と
比べて大きく臨界温度および臨界電流特性が改善することを報告した。しかし、自作粉から作製した線材の臨界電流特性は市販粉線材の半分程度であり、その理由として
自作粉の出発原料中のホウ素酸化物等の不純物の影響が挙げられた。本発表に関して、有機酸由来の炭素置換やボールミル条件、臨界温度低下の要因等について質問が
寄せられ、活発な議論が行われた。


加速器 1P-p9-11 座長 岩井 貞憲

本セッションでは加速器関連の2件の発表があった。
「1P-p09:白井(早大)」REBCOコイルのサイクロトロン応用に関し、通電パターンによる遮蔽電流磁場の低減について検討した結果が報告された。メインコイルとセクター
コイルを同時励磁するか、いずれかを先に励磁するかの3条件と、オーバーシュート(運転電流の10%)の有無を変えた計6条件の遮蔽電流磁場分布が解析により求められた。
オーバーシュートした3条件では、いずれも遮蔽電流磁場分布が低減される結果が示された。コスト、スペースの観点から同時励磁が望ましいとのこと。
「1P-p11:尾花(NIFS)」重粒子回転ガントリーの漏れ磁場の遮蔽を、現行の鉄ヨークから、アクティブシールドに変更した場合の電磁力を解析した結果が報告された。電磁力
を積算すると、巻線断面における水平方向の力は、ダイポールコイルとシールドコイルのどちらも外向きで同程度であったが、垂直方向の力は、ダイポールコイルでは内部で
圧縮応力が発生し、内向きに力を受ける結果が示された。今後、コイル間、およびシールドコイルの外周部への支持構造体の設置を検討していくとのこと。


磁気分離(1) 1P-p12-17 座長 植田 浩史

本セッションでは、磁気分離に関する発表が6件あった。研究チームとしては阪大、福井工大、宇都宮大の3機関によるものである。従来のポスターセッションに比べ、チャット
形式のため、一人一人の質問がまとまった量があり、それに対する回答も長文でかなり丁寧な対応をしていた。
1P-p12: 天然高分子修飾マグネタイトの利用した重イオン除去手法についての報告である。天然高分子としてアラビアコムを用いた修飾マグネタイトを調整し、カドミウムイオン
を45%除去することができた。
1P-p13: 磁気分離を用いた常磁性体の高速大量処理に向けて、常磁性体と強磁性体の共存系において両者の凝集による分離能力が向上することを利用した手法の実用性について
検討をした。ヘマタイトとマグネタイトの凝集による、磁気分離効率の向上を検討し、良好な結果を得た。しかし、磁気フィルターの高度化が必須であることが明らかとなった。
1P-p14: 食品工場排水を想定した油分含有排水に磁気活性汚泥法を適用した結果の報告である。従来の活性汚泥法では、前処理として油分を除去することが多く、排水量が多いと、
油分処理がしきれなくなり、機能低下を引き起こす。しかし、磁化活性汚泥法を用いると、前処理や汚泥引き抜きを行うことなく、難分解成分である油分を十分の処理できることが
示された。
1P-p15: 家畜抗生剤を磁化活性汚泥法の利点を活かして生分解処理すること目的とする研究である。磁気分離を用いることで、模擬畜産排水を排出基以下まで磁化活性汚泥法のみで
浄化できた。
1P-p16:活性汚泥法における急激な負荷変動、汚泥沈降性の悪化などの処理不安定性の問題があるのに対して、磁化活性汚泥法は、急激な負荷変動などで発生するバルキングに対して
も安定した水処理を維持できることが明らかとなった。
1P-p17:磁力保持脱水乾燥法は、ベンチスケール装置の実験から、実用装置でも反応槽の1/50スケールで汚泥処理が可能であることが示された。装置の構造の工夫次第で省スペース化
が期待できる。


回転機 1P-p18-22 座長 中村 武恒

1P-p18:HEIDEMAN(東大)らは、電力変換器の特性を考慮した電動航空推進システム用全超電導発電機の最適設計結果を報告した。コンバータ特性はDC電圧によらず一定と
仮定して検討され、漏れ磁束の制約などを考慮して設計された。
1P-p19:武井(海洋大)らは、潮流発電用二重反転タービンへの適用を想定した超電導バルク発電機の電気設計結果を報告した。解析の結果、外側電機子と内側電機子の最大
トルクがそれぞれ178 kNm、232 kNmを実現し、対応する合計出力が468 kWとなった。なお、解析に際してHTSバルクは強制磁化源として与えている。
1P-p22:瞿(東大)らは、NSGA-IIとFEAに基づく超伝導風力タービン発電機の設計結果を報告した。交流損失としてはヒステリシス損失のみを考えており、結合損失等は考慮
していない。出力15 MW、極数12、回転数10 rpm、運転温度22 Kの発電機の設計結果が示された。


解析・特性評価 1P-p23-27 座長 花井 哲

1P-p24:銭(東大)らは、REBCOコイルにおいて課題となるホットスポット問題を解決するために有限要素法を用いた三次元電磁界・熱伝導場連成解析ツールを開発、それを
用いて実施した抵抗型限流器の解析結果を紹介した。解析は、薄板近似モデルにT-Ω法を応用した電磁界解析と3次元モデルの熱解析を連成させたもので、抵抗型限流器に
おいて実施した解析例では、同程度の劣化であっても、線材幅に対して広く軽度に劣化した場合より線材幅に対して狭くシビアに劣化している方が、温度上昇が大きいと
いう結果が示された。
1P-p25:谷貝(上智大)らは、MgB2コイルの大容量化に適したコイル製造方法を確立するために、熱処理済みのMgB2線材をラザフォード導体化、さらにコイル化するR&Wの
テストコイルを試作してIc劣化の調査を行った。試作の各ステップにおける素線に加わる歪を解析し、素線の許容歪以上の歪が加わらないように作業したものの、コイル化後
では-80%とIcが劣化した。これは、以前試作したW&Rのコイル劣化(-40%以下)よりはるかに大きく、R&W方式で大型MgB2コイルを製作することが容易でないことが示された。
1P-p26:泊瀬川(東北大)らは、REBCOコイルのクエンチ検出器として分流開始温度温度を低く設定した超伝導線材を熱センサとして使用したLTSクエンチ検出器が有効と考え、
検出感度向上のため、検出感度の支配因子の考察を行った結果を報告した。支配因子のひとつである検査電流密度制限値に関しては、検出器内部の熱容量、発熱密度が
支配的であり、分流開始時間に関しては、断熱条件の場合、熱容量、検査電流負荷率が支配的であることが示された。




安定性・保護 2A-a01-05 座長 

講演無し

MRI応用 2A-p01-05 座長 野口 聡

2A-p01:宮崎(東芝)らは、MRI向け高温超電導コイルの開発を進めている。導電性樹脂を用いることで、いわゆる無絶縁コイルと同様に電流が常電導部を迂回するマグネット
を開発している。以下の3件で、過電流試験、保護解析、パンケーキコイル・クライオスタット制作について報告している。
2A-p02:石井(東芝)らは、導電性樹脂を用いたREBCOパンケーキコイルの過電流試験について報告している。伝導冷却下でも保護動作が働いており、中心磁場の乱れも少ない
ことが確認された。
2A-p03:宇都(東芝)らは、導電性樹脂を用いたREBCOパンケーキコイルの解析手法を提案した。ターン間絶縁コイルでは熱暴走する場合でも、導電性樹脂を用いたREBCOパンケーキ
コイルの温度は抑制されていることをシミュレーションで示した。
2A-p04:岩井(東芝)らは、パンケーキコイルの試作とクライオスタットの製作状況について報告している。100個のパンケーキコイルを試作し、超伝導特製の劣化がないことが
報告された。
2A-p05:内田(京大)らは、電源の制御方式の違いがMRI撮像に与える影響について報告している。経済性、大きさ、冷却の観点から、スイッチング電源での駆動が理想的である
と報告された。


A15線材(1) 2B-a01-06 座長 西島 元

2B-a01: 菱沼 (核融合研) ブロンズ法Nb3Sn線材の(Nb3Sn生成前の)母材にZnおよびInを添加した三元系ブロンズを用いたNb3Sn線材の臨界電流の横圧縮依存性についての
報告。三元系ブロンズNb3Sn線材は、過去に報告されているブロンズ法線材(CuNbによる内部補強線材を含む)に比べて、高応力まで臨界電流を維持する傾向を示した。
ただ、三元系ブロンズNb3Sn線材の臨界電流値は一般的なブロンズNb3Sn線材とくらべて低く、まだ改良の余地がある。
2B-a02: 伴野 (NIMS) Nb3Sn線材におけるHf添加効果について、焼鈍条件、加工性等の観点から調査した結果の報告。今回はロッド・イン・チューブ法による調査を行ったところ、
Nb3Sn結晶粒の微細化は36%程度であった。また、加工性の観点からは、Nb-Ta-Hf合金の回復・再結晶・粒成長過程を十分に把握した綿密な組織制御が必要とのこと。
2B-a03: 森田 (上智大, NIMS) 内部Sn法Nb3Sn線材におけるTi添加効果に関する報告。Snに添加した場合、Nbに添加した場合、Cuに添加した場合(かつSnにZn添加)の3種類
について調べたところ、Cuに添加した場合とNbに添加した場合のnon-Cu Jcが有意に向上した(両者は同程度)。また、Cuに添加した場合が、Nb3Sn結晶粒径が最も小さく、結晶
組織改善効果があった。CuへのTi添加量を増加することで、Nb3Sn組織改善+Jc向上が期待される。
2B-a04: 肥村 (東海大) Web発表無し
2B-a06: 高畑 (核融合研)RHQT法Nb3Alテープ導体を用いた大容量導体開発についての報告である。Nb3Snに比べて歪耐性が高いNb3Alを用いることで核融合炉用巨大コイルを
リアクト&ワインド法で製作することを目指している。RHQT法Nb3Al線材を圧延加工したテープと銅ストリップを用いた模擬導体を作製し、磁場中通電試験を行ったところ、クエンチ
した電流値は予想されるIc値に近く、大容量導体への可能性が確認された。


核融合(2) 2B-p01-05 座長 谷貝 剛

核融合用の大型マグネット開発では、巻線部分の厳しい製作精度だけでなく、導体化技術そして長い電流パス途中にある導体間およびマグネット間接続技術も重要な研究項目である。
トカマク型についてはITERおよびJT-60SAの建設が進んでおり、その現状が詳細に報告された。
2B-p01:小泉(QST)からのITER用のTFコイル(2号機)のサイトへの移送報告や、2B-p03:村上(QST)からのJT-60SA CSコイル設置に関する報告では、厳しい製作精度をクリアした
マグネットモジュールの移送・設置の問題に対する重要な知見が蓄積されつつある事が伺えた。マグネット間接続に関しては、2B-p02:今川(NIFS)から、TFコイル間のCIC導体接続
サンプル試験に関する報告があった。ヘリカル型では、高温超電導(HTS)テープ線材を積層してアルミ合金ケースに封入したFAIR導体の短尺サンプル試験結果が2B-p04:三戸(NIFS)から
報告され、導体の捻れと不可逆なIc劣化の関係、さらに導体製作技術の改善に関して活発な議論が交わされた。これに関連して2B-p05:上野(鹿児島大)からはテープ線材を積層した
導体の交流損失特性が報告され、HTS大型導体研究の進展が印象的であった。




熱伝達 2C-a01-06 座長 岡村 哲至

2C-a01 中川(大阪府大):50 Tのパルス磁場をかけることができる0.1 K以下の環境を作ることを目指している。断熱消磁部から磁場が印加される場所まで、銅線束による熱伝導
で冷却することを考えており、パルス磁場によって生じる銅線束内での発熱の影響を実験とモデル計算から検討している。
2C-a02 中山(神戸大):液体水素タンク内において蒸発損失の少ない減圧条件を検討することと減圧時の液体水素の挙動について調べることを目的としている。温度、圧力、
流量の計測に加えて、高速度カメラを用いて沸騰の様子を観察している。蒸発量と減圧速度の関係などを明らかにしている。
2C-a03 武田(神戸大):液体水素タンクの横振動下における容器内部の蒸発特性を明らかにすることを目的としている。液体窒素を用いて大気圧下と蓄圧下で実験を行っており、
加振時やその後の静止時の液体窒素内部での温度分布などを明らかにしている。
2C-a04 佐藤(神戸大):液体水素流量計の開発のための基礎研究である。管内に液体水素をヘリカル流として流し、遠心力で管壁に生じる歪みから流量を推定する。歪みゲージ
の自己温度補償範囲外である液体ヘリウム温度と液体窒素温度での歪みゲージの温度特性の調査を行っている。
2C-a05 高田(核融合研):超流動ヘリウム(HeII)液溜めから縮小流路を経て飽和HeII槽に伝熱が生じる場合にみられる間欠沸騰現象について、入熱量と縮小流路の入り口の温度
の時間変化の関係などから、間欠沸騰のメカニズムについて考察を行っている。
2C-a06 廣谷(玉川大):超電導機器の冷却を想定した、沸騰熱伝達の促進に関する研究である。銅球表面にメッシュ状の低熱伝導の被覆層を装着した場合、裸球に比べて液体窒素
中での沸騰伝熱量は約3倍になり、これは固液接触割合が向上したためとしている。


冷却・冷凍機 2C-p01-04 座長 仲井 浩孝

2C-p01:楢崎(住重)は、次世代赤外線天文衛星SPICAに搭載される機械式冷凍機システム運転の持続性向上のために、ガス循環システムの導入を検討している。ガス循環システム
を導入すると、伝導ロスや冷凍機の消費電力、台数の削減などの効果があることを示した。ガス循環システムの関係式から得られた結論について、根拠となる計算結果や解釈に関
する質問があった。
2C-p02:原(京大)らは、超電導発電機の冷媒として液体水素を利用する場合に、安定して液体水素を給排気し、また、回転子の回転数が変動したり、熱負荷が変化しても液面が
安定的に維持できるかを実験的に検証した。回転体内の液体水素の液面位置や温度の変化が回転体内の液体水素の挙動とどのように関連しているかの議論があった。
2C-p03:平野(NIFS)らは、磁場発生源と磁気作業物質との間の空隙に磁気遮へい体を出し入れすることによって磁気冷凍に必要な磁界変化を生じさせることができることを、磁場
解析と簡易な実験装置を用いて示した。十分な遮へい効果を得るために磁気遮へい体として超伝導体を用いるが、超伝導体磁気遮へい体の場合は薄膜を積層する構造となるため、
磁気的・機械的応力の影響についての質問があった。
2C-p04:朱(同済大)は、高効率大容量のパルス管冷凍機を目指して、イナータンス型パルス管の変形であるステップピストン型パルス管冷凍機の研究を行っている。高効率化の
ためには、リニアコンプレッサーとコールドヘッドの整合が必要となる。ステップピストンとアフタークーラーの間の死容積やリニアコンプレッサーの電圧、温度などが冷凍機の
性能に与える影響を調べた。高効率化のための指針についての質問があり、蓄冷器が高効率で、ステップピストンのステップ比や周波数を最適化する必要もあるとの回答があった。




小型冷凍機・伝熱特性 2P-p01-05 座長 楢崎 勝弘

2P-p03:高畑(NIFS)は 高温超伝導機器のクエンチに伴う局所温度上昇検出を過熱液体の突沸現象を圧力計で検知する方法を提案した。今回は過熱液体として液体窒素を用いた
基礎的実験により実証している。液体の種類と圧力によって過熱限界が変化するため、検出する設定温度の自由度もあり、今後の研究成果に期待したい。
2P-p04:小林(愛媛大)らは、GM冷凍機に使用される磁性蓄冷材の候補として直方晶GdNiSi1-XのSi濃度を変化させて磁気転移温度と比熱特性についての報告があった。報告では
HoCu2との比較が示されている。HoCu2の代替としては磁気転移温度が少し高いように思われるので、ジュールトムソン冷凍機の予冷機として10 K付近で冷却能力が必要な冷凍機の
蓄冷材の方が面白いかもしれない。実際に冷凍機に組み込んだ評価試験も期待したい。
2P-p05:阿部(東工大)らは、室温磁気冷凍システムにおける熱交換器の最適形状化に関する研究として、フィンチューブ式熱交換器とマイクロチャンネル熱交換器に対して計算
による比較評価結果を報告した。ε-NTU法を用いた冷凍能力から循環ポンプ動力とファン動力を除いた正味冷凍能力を計算している。今回の比較ではフィンチューブ式熱交換器の
方が有利であるとの結論であった。


A15線材(2) 2P-p06-07 座長 伴野 信哉

2P-p06:村河(東海大)神戸製鋼DT線材に関するSn拡散挙動の報告があった。650℃×200 hの最終熱処理を行う前に、500℃の熱処理を行った。現象が変わらないとのことだが、
内部スズ法Nb3Sn多芯線の拡散現象は、主にCu/Snの相互拡散過程、Cu-Sn/Nbの相互拡散過程に分かれ、各温度における中間層の生成、ボイドの生成など非常に複雑である。今後
もう少し多角的な考察を期待したい。
2P-p07:桶谷(東海大)急熱急冷法Nb3Al線材の低温での機械特性について報告があった。引張試験や応力下臨界電流測定を実施した。線材構成により機械特性には差が見られた。
今後線材構成との相関を調べることを期待したい。


薄膜作製・バルク着磁(1) 2P-p08-09 座長 内藤 智之

2P-p08 元木(青学大): 著者らはこれまでフッ素フリーMOD(FF-MOD)法で作製したYBCO薄膜においてCl添加がTcの低下無くJcを向上させることなどを報告してきた。今回、各種RE
に対してREBCO薄膜を同手法で作製したところ平滑な膜面が得られ,PrBCO薄膜以外は超伝導を示した。また、軽REを除いてCl添加によってTcが向上することが示された。それは
Ba2342酸塩化物による結晶性の向上によるとのことであった。
2P-p09 石田(東大): トリプルシードREBCO系バルクの磁束密度(捕捉磁場)分布を有限要素法シミュレーションによって再現することを試みた発表であった。ドメイン間の臨界電流
密度をドメイン内より低くすることでドメイン内およびドメイン間をそれぞれ流れる2種類の臨界電流を再現でき,それと併せて3つのピークをもつ磁束密度分布も定性的に再現できた
とのことであった。


HTS線材 製造/評価(2) 2P-p10-13 座長 土屋 雄司

2P-p10:井上(福岡工大)らは、TFA-MOD法を用いて作製したIBAD基板上BaHfO3添加YBCO薄膜のJc向上について検討を進めている。輸送測定で得られたJcの阻害要因を明らかに
するため、走査型ホール素子顕微鏡を用いたJc分布とEDSを用いた表面元素組成分布の比較について報告した。結果、Jcはmmスケールで一方向へ不均一性が見られ、EDS観察から
非超伝導層と思われる領域でBaの著しい欠損があることを確認した。質疑応答では、寺西(九大)から、上記の組成分布は本焼成時のガスの流れに依る膜表面部分の未反応部分
の残存により生じると説明された。
2P-p11:鬼塚(九大)らは、REBCO線材のJc分布についてホール素子顕微鏡を用いて非接触で測定する手法の開発を進めている。TapeStarTM方式とビオ・サバール則の逆問題方式
とを比較し、前者では線材とホール素子とのリフトオフ距離が空間分解能を決めるため、微小欠陥の検出には注意が必要であることが示された。質疑応答では、TapeStarTM実機
の分解能について質問があり、約1 mm以上のサイズの欠陥については定量的に見積もられる可能性があるとされていた。


超電導・低抵抗接合(1) 2P-p14-15 座長 石原 篤

「2P-P14:渋谷(NIMS)」らはPn-Sb-Biの各組成を用いて接続したNbTi-Bi2223線に対して、I-V特性評価や接合断面の微細組織の観察・分析結果、接合抵抗について報告した。
はんだ組成に関わらず、シース材(銅や銀)は完全固溶しており、NbTi線とはんだ界面、Bi2223線とはんだ界面は、Bi3Pb7を中心にした組成になっていること、また接合抵抗は
約1.13 nΩであることを報告した。今後は接合界面の面積を増やして(接合長を延ばして)接合抵抗の更なる低下を目指すとのことであった。
「2P-P15: アパリシオ(東北大)」らはVノッチせん断試験アプローチを用いたせん断強度測定の取り組みについて報告した。接合試料においては、単純引張試験では接合部の
端で応力集中が起こるため、正確なせん断応力の評価が難しく、せん断応力集中の緩和を目指して、Vノッチせん断試験を試みているとのことであった。治具の表面粗さの問題、
液体窒素温度での熱収縮による部品間に隙間が発生する問題、セッティングにおける軸ズレの問題などがあり、均一なせん断応力はまだ実現できていないが、今後改良を進めて
いくとのことであった。本装置は通電試験も可能な設計であるので、Icや接合抵抗値のせん断応力依存性なども評価可能であり、今後の開発が期待される。


核融合(1) 2P-p16-18 座長 村上 陽之

2P-p16:國徳(阪大)らは、核融合装置用の絶縁材料の液体窒素中での放射線照射の影響について報告した。液体窒素中の酸素が照射によりオゾンに変化し、その酸化分解が悪影響
を及ぼしている可能性を示唆した。今後は、液体窒素中の酸素の影響を除去するため低温気相中での試験など、核融合装置実機の照射条件に近づけた試験を計画している。
2P-p17:大辻(東大)らは、次期ヘリカル装置のREBCO導体の劣化原因について報告した。熱収縮による座屈の影響に着目し、荷重試験の結果、EulerとJohnsonの座屈荷重の式を組み
合わせることで、試験結果を説明できることを示した。
2P-p18:小野寺(NIFS)らは、静磁場中でREBCO導体を回転させながら送りこみ、磁化状況を連続的に測定することで導体の欠陥検出する方法を開発している。欠陥部の磁化状態の
変化が観測されており、有用性が示された。実導体での必要磁場強度について議論があった。


コイル保護 2P-p19-25 座長 柳澤 吉紀

2P-p19:宮本(早大)らは、SMES応用の観点からNI REBCOコイルにSUSテープ共巻を施し、層間接触抵抗を大きくすることで、系の応答性が向上することを実験的に示した。
SUSテープの表面処理や、同じ効果を別手法で得る方策などについて議論があった。
2P-p20:北村(早大)らは、NI REBCOコイルの内部に、層間接触不良がある場合でも高い熱的安定性が得られることを数値解析で示した。安定性と層間接触抵抗の値の関係に
関して議論があった。
2P-p21:根本(早大)らは、NI REBCOコイルにおいて、銅安定化層を薄くしても、熱的安定性が得られることが数値解析によって示された。ここでも、層間接触抵抗の値の
影響に関して議論があった。
2P-p22:村上(早大)らは、NI REBCOコイルでは、遮蔽電流緩和による磁場ドリフト抑制のためにオーバーシュート励磁をしても、回路の時間遅れによって十分な効果が得られ
ないことが示された。今後、効果を得る方法を検討するとのこと。
2P-p23:津吉(早大)らは、断熱および伝導冷却下のm級NI REBCOコイルにおいて、発熱と熱暴走発生の関係を報告した。
2P-p24:間藤(北大)らは、NI REBCOコイルにおいて、メインコイルの内周・外周に非導通巻線を設置することで、クエンチ時の誘導電流を抑制できることを数値解析で明らか
にした。
2P-p25:間藤(北大)らは、導電性樹脂を用いたNI REBCOコイルの電源遮断・電流減衰の振る舞いを数値解析した。電源遮断後、電磁誘導によって部分的に運転電流を上回る
領域が生じるという結果が得られ、これによるクエンチ発生の可能性を考慮する必要があることが明らかになった。


送電ケーブル(2) 2P-p26-28 座長 川越 明史





HTS線材特性(2) 3A-a01-07 座長 木内 勝

3A-a01:佐藤(青学大)らは、Bi2223線材の大気圧中低酸素分圧下の2次焼成効果について調べた。特に3~5 kPaの短時間2次焼成によってDI-BSCCOを上回る磁化特性が得られ、
さらに低酸素分圧、低温焼成より磁界中特性も改善できることを示した。今後の最適化によるさらなる特性改善に期待したい。
3A-a02:長村(応用科学研)らは、BSCCO-2223テープ線材の臨界電流の歪み依存性と弾塑性特性の相関について調べた。解析の結果、臨界電流が95%減少する応力R(95%Ic0)と
応力-歪曲線から得られる0.2%耐力R0.2には、比例するような相関がないことを示した。
3A-a03:木須(九大)らは、磁気顕微法を用いて一世代前のBi-2223 Type H線材とType HT-CA線材の局所Ic分布を評価し、その特性を比較した。Type HT-CA線材は高解像度計測
においてもIc低下部位は観測されず、局所均一性が飛躍的に向上し、この線材補強加工が有用であることを示した。


超電導接合/低抵抗接合(2) 3A-p01-06 座長 筑本 知子

本セッションにおいては、超電導接合について以下の5件の発表があった。
3A-p01:熊倉ら(NIMS)は、PIT法で製造した7芯MgB2/Cu線材を斜めに切断したものを銅管またはSUS316管に挿入してつきあわせて加圧加熱することで超電導接続し、その特性評価
を行った結果について報告した。SUS316管を用いた場合にはほぼ素線と同レベルのIcが得られたのに対し、銅管ではIcの低下がみられている。この原因について、断面観察の結果
から、銅管は柔らかいため応力のかかり方が弱く良好な接合界面が得られなかったためと考察した。
3A-p02:舩木ら(島根大)はGdBCO線材の接合について、接合部にEuBaCu0原料を挟み、KOH蒸気中で加圧加熱することにより低温(470〜525℃)で超電導接合形成する方法について、
原料粉への銀の添加量(0,10,30%)と熱処理温度の影響について検討した結果について、銀10%添加では接合部の接着性が向上するとともに接合抵抗は低下、また接合部のTc(onset)
の向上がみられたことを報告した。


3A-p03:寺西(九大)らはGdBCO線材の接合面にGd,Ba,Cuの微結晶をPLDで堆積し、加圧加熱(1093 K)で超電導接合形成する際に、圧力(PL)を1.1〜40.7 MPaで変化させた時の特性と
組織の変化について報告した。PL増加とともにTc(onset)は変化しないが、Tc(0)は低下、Jcも低下が見られた一方、接続面積と機械強度は向上しており、XRDの結果を踏まえ、PL増加で
接続面積が増加したことで、内部の酸素拡散が十分になされず特性が低下したと考察した。
3A-p04:武田(理研SPDR,東大)らは高強度Bi2223線材(DI-BSCCO Type HT-NX)について、補強材、ハンダ、シース材を除去した後に、斜め研磨により超電導フィラメントを露出させ、
原料粉をディップコートして加圧加熱処理することにより、超電導接合する方法を検討し、Icはまだ低くばらつきは多いものの超電導接合(<10−13Ω)を確認できたことを報告した。
接合抵抗は4.2 Kで接合1個あたり1 nΩ程度と見積もられ、この値はほぼ銀シース由来と考えらえるとのことである。また、直径13 mm、長さ10 mm程度のはんだ接合のIc値は自己磁場下で
240 A以上であった。
3A-p05:小林ら(NIMS)はNbTiとBSCCO(DI-BSCCO Type HT-NX)のPb-Sn-Biはんだ接合試料の接合部抵抗について減衰法を用い、かつホールセンサーをカットコアで挟むことで従来より
もはるかに高い精度の測定が可能になったことを報告した。
初めてのオンラインセッションであったが、掲示板形式での質疑応答だったこともあり、質問も回答も十分に練られた形での十分なディスカッションができたことは一つの収穫であった
と感じた。


調査研究会報告  座長 





超電導応用 3B-a01-05 座長 宮城 大輔



加速器応用 3B-p01-05 座長 淡路 智

本セッションでは、本来予定されていた5件のうち2件の発表があった。
3B-p04:鈴木(KEK)は「LHC高輝度アップグレード超伝導双極磁石のためのクエンチ保護ヒーターの開発」と題して、ビーム分離用ダイポールマグネット(MBXF)用のクエンチ
保護ヒーターの動作についてシミュレーションと実験の双方から検討した結果について報告した。クエンチ保護ヒータを、最初の直線状からジグザグ構造に変更し、パラメータ
の最適化によってクエンチ時の電流減衰特性の実験結果を定量的に再現し、コイル最大温度を300K以下にすることが可能となったと報告した。
3B-p05:曽我部(京大)は「伝導冷却された小型高温超伝導二極マグネットの変動励磁下での発生磁界測定」と題し、重粒子線治療に用いられる回転ガントリー用高温超伝導
マグネットにおける、遮蔽電流磁場の二極と六極成分への影響について報告した。実験の結果遮蔽電流磁場は、保持時間よりも繰り替えし励磁回数の影響が大きいことが分かった
とした。特に遮蔽電流磁場は励磁パターンや保持時間よりも回数の影響が大きいことから、繰り返し励磁回数と遮蔽電流磁場の関係を計算によって予測することが重要とした。




バルク着磁(2) 3C-a01-04 座長 山本 明保

バルク着磁 (2)セッションでは4件の発表があった。
3C-a01: 森田(日本製鉄)らは、QMG ®リングバルクマグネットの捕捉磁場の均一化について報告した。超伝導バルクの計測応用では、高強度でかつ、高均一の磁場が必要と
される。直径60 mmの内径が異なるリングを積層し、着磁後、昇温することで、着磁に使用したマグネットの磁場分布と比較して大幅に捕捉磁場分布の均一性を向上させることが
できることを見出した。
3C-a02: 岡(芝浦工大)らは、MgB2バルク磁石のパルス着磁過程における磁束跳躍とそのふるまいについて報告した。ホットプレス法とスパークプラズマ焼結法のMgB2バルク
試料に対して、パルス着磁を行い、試料上面中央の磁束密度の計測を行った結果、これらの試料の低温でのパルス磁場印加時の磁場侵入挙動は類似していることを指摘した。
3C-a03: 横山(足利大)らは、クロス型軟鉄ヨークを用いたREBCOバルク体のパルス着磁特性の評価について報告した。著者らはパルス着磁の際に用いる軟鉄ヨークの形状や
大きさが捕捉磁場に与える影響についてこれまで報告している。今回、効果のみられたクロス型ヨークについて、GSB、GSRの2通りの配置方法を検討したところ、GSR部に配置
した方がより有利であることを見出し、GSR部のピン止め特性と磁場侵入のし易さの観点から考察を行った。
3C-a04: 鎌田(岩手大)らは、パルス着磁におけるソレノイドコイルとスプリットコイルによる磁束の振る舞いについて報告した。バルク表面の複数個所に配置したホール素子
により、着磁後の磁束密度の時間変化を計測した。ソレノイドコイルではバルク外側から磁束が侵入するのに対して、スプリットコイルではある時間でバルク中心に急激に磁束が
侵入することを見出した。


バルク作製 3C-a05-08 座長 寺尾 悠

青学大の元木ら(3C-a05)は、REBCO溶融凝固バルクにおける酸素拡散機構の解明を目的とし、従来の酸素拡散モデルにおける変数を見直し、バルクの試料サイズによらず
有効拡散長を見積もることが出来るモデルを用いてこれまでに作成したバルクの酸素拡散機構について考察した結果を報告した。
青学大の布川ら(3C-a06)はRE123溶融凝固バルク中におけるポアを低減することでバルク全体の高密度化を達成し、かつ溶融前焼結と高圧ペレット成型により低磁場領域でのJc
特性が改善したこと等の結果について報告した。
東京農工大の田中ら(3C-a07)は、MgB2バルクの作成に当たり、新たに提案するPremix MVT法により作成したバルクについて特性評価を行い、in situ法によるバルクよりも
高純度・高密度かつ、Jcが2.5倍向上した結果等を報告した。
岩手大の高橋ら(3C-a08)はリング状のMgB2バルク超電導体をNMRへ応用することを目的として、リング状MgB2バルクを積層させて着磁させた場合のボア内の磁場分布
均一性について実験的に調べた結果を報告した。


バルク・薄膜・厚膜作製 3C-p01-05 座長 岡 徹雄 

大会3日目の本セッションでは、バルク・薄膜・厚膜の作製とその特性評価に関して4件の発表があった。
3C-p01の仲川(岩手大)らは、放電プラズマ焼結法によって作製したBa0.6K0.4Fe2As2多結晶バルク体の合成条件を検討し、バルク体で初めて磁場捕捉に成功したことを報告した。
発表に対し、製造条件による充填率や結晶構造に質疑応答がなされた。
3C-p02の德田(東京農工大)らは、放電プラズマ焼結法によるKドープBa122多結晶バルクの合成について発表を行い、メカニカルアロイングによる前駆体から高密度にKドープ
したバルクを合成して、その単相化に成功した。製造条件に対する充填率や結晶同定の結果などに質疑応答がなされた。
3C-p03の天瀬(岩手大)らは、Nb及びNb-Sn化合物を前駆体としたNb3Snバルク体の作製と磁束ピン止めについて評価した結果、Jcの向上が必要としつつも、10 Kで2.16 Tの
捕捉磁場を得たことを報告した。磁化測定ではフラックスジャンプを観測しその挙動についても質疑応答がなされた。
3C-p05の岩見(青学大)らは、磁場配向によって高度にc軸配向したBi2223多結晶材料の開発を題材とし、これをバルク材として応用するための作製方法と、高度な配向性に
関する実験結果を報告した。発表に対し、焼結温度と粒間の欠陥に関する質問があり討論が行われた。